「理系アナ桝太一の生物部な毎日」(桝太一)

よくよく自分の周りを見渡せば

「理系アナ桝太一の生物部な毎日」
(桝太一)岩波ジュニア新書

テレビを見ることがあまりないので、
この桝太一なるアナウンサーのことは
全く知りませんでした。でも、
岩波ジュニア新書にしては異例の、
本の高さ3分の2にも及ぶ
写真入りの帯が、
ただならぬオーラを放っていたので、
つい買ってしまいました。

中身は単純明快です。中高生のとき
生物部に入って虫を追いかけていた。
大学生のときはアナゴ、
院生のときはアサリを研究していた。
アナウンサーをめざして
日テレに入社、
今日まで頑張ってきた。という、
人気アナかタレントでなければ本になど
ならなかったであろう内容です。

でも正直、はまってしまいました。
これまで
「自然って素晴らしいんだよ」と
読み手に語りかける本は、
たいてい私よりも
上の世代が著したものでした。
身のまわりの至る所に
自然が存在していた
昭和30年代を振り返って懐かしがり、
「それに引き替え今の子どもたちは
不幸です」という形で締めくくる。
そういうものが多かったと思います。

この本は違います。
筆者は1980年代生まれの
TVゲーム世代、
私よりはるかに若い世代です。
しかも田舎などではなく
首都圏千葉県育ち。
でも、だからこそ「よくよく
自分の周りを見渡せば、
そこは生き物たちの
魅力溢れる世界があるんだよ」
ということを、
実によく教えてくれるのです。

筆者の子ども時代。
筆者は自分の庭で虫たちと戯れ、
小学校の教室の水槽に目を輝かせる。
麻布中学の生物部では、
学校の近くの公園の
樹木の植生を丹念に調査し、
ジオラマとして再現する。
平成の世の中だって、東京の中にだって、
まだまだ生き物はたくさんいるのです。
自然は魅力的に存在しているのです。

そうか、そうだったのか。
身のまわりから
自然が少なくなってきたのは事実です。
でもそれ以上に、
私たちが身のまわりの自然に対して
興味・関心を持たなくなったことの方が
大きかったのです。
気付く眼と心さえあれば、
輝きと驚きに満ちた自然の世界が、
私たちの周囲に広がっていることを
発見できるのです。
中学校理科を学び始める
1年生に薦めたいと思います。

それにしてもこの歳になって、
本の向こうの若者たちから
教えられることばかりです。
理科教師として
まだまだ修行が足りなかったと、
反省させられる一冊でした。
今度枡太一アナの出演する番組を
じっくり観てみたいと思います。

※筆者は数学が苦手でも
 東大の理系の学部に合格しています。
 麻布高校の「数学が苦手」のレベルは
 どのくらいを指しているのだろう…。
 頭のいい人たちはすごい…。

(2020.3.6)

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